JEPA4Japan · チュートリアル

第6章―二枚は同じに。でも全部を白紙にはしない

1,269文字 3分で読めます #LeVJEPA#JEPA#自己教師あり動画学習#SIGReg

不変性が役立つ理由と、定数出力や次元崩壊を許してしまう理由を理解します。

コース進捗 コース目次 34レッスン中 34件を公開中

第0部―まず地図を広げる

  1. 01 第0章―始める前に:この講座でできるようになること 公開中
  2. 02 第1章―同じ動画を、二つの窓から見る 公開中
  3. 03 第2章―Yann LeCun の研究路線をたどる 公開中
  4. 04 第3章―名前に迷わないための JEPA 家系図 公開中

第1部―簡単な目的で、なぜ動画が分かるのか

  1. 05 第4章―動画は自分で問題を作れる 公開中
  2. 06 第5章―全ピクセルではなく、意味を残す 公開中
  3. 07 第6章―二枚は同じに。でも全部を白紙にはしない 現在のレッスン
  4. 08 第7章―SIGReg:点の雲を影から調べる 公開中
  5. 09 第8章―一行の目的関数で LeVJEPA を読む 公開中

第2部―一本の動画を一台のエンコーダーへ

  1. 10 第9章―大域ビューと局所ビューの作り方 公開中
  2. 11 第10章―動画を時空間の小片に切る 公開中
  3. 12 第11章―一台のエンコーダー、一つの投影ヘッド、一枚の要約札 公開中
  4. 13 第12章―一回の前向き計算を端から端まで 公開中
  5. 14 第13章―95%捨てると、なぜかよく見える 公開中
  6. 15 第14章―ブロック因果注意:同じ時刻は見える、未来は見えない 公開中
  7. 16 第15章―RoPE、1フレーム tubelet、思いがけない密特徴 公開中

第3部―実験を読めてこそ、論文を読んだと言える

  1. 17 第16章―五段のアブレーションが答えること 公開中
  2. 18 第17章―同じ周回数は、同じ費用ではない 公開中
  3. 19 第18章―ImageNet、K400、SSv2 は何を試すか 公開中
  4. 20 第19章―論文の結果を帳簿にする 公開中
  5. 21 第20章―まだ言ってはいけない結論 公開中

第4部―公式リポジトリから自分の実験へ

  1. 22 第21章―公式リポジトリの見取り図 公開中
  2. 23 第22章―Walking Tours:10本の長編を学習データにするまで 公開中
  3. 24 第23章―既定設定を読み、学習を始める 公開中
  4. 25 第24章―うそをつかない小さな動作確認から始める 公開中
  5. 26 第25章―学習なしで公開重みから特徴を出す 公開中
  6. 27 第26章―自分の動画を凍結評価する 公開中

第5部―表現を世界モデル構想へ戻す

  1. 28 第27章―大事な境界:LeVJEPA は計画器ではない 公開中
  2. 29 第28章―LeVJEPA を次の世界モデルへつなぐ 公開中
  3. 30 第29章―入門から論文まで、10の研究プロジェクト 公開中

付録―必要なときに開く技術リュック

  1. 31 付録A―これだけは要る数学道具箱 公開中
  2. 32 付録B―完全テンソル形状表 公開中
  3. 33 付録C―用語集と論文年表 公開中
  4. 34 付録D―再現とレビューのチェックリスト 公開中

同じにする。でも同じにしすぎない

  1. 犬の全景一枚の札
  2. 犬の耳近い札
  3. ずるい答え全部「もの」
  4. 崩壊情報が消える
同じ動画の札をそろえるのはよいことです。すべての動画に同じ札を貼るのは困ります。

ゼロを書けば満点?

先生は、各動画の大きな札と小さな札が一致するかだけを見ます。ある生徒が満点を取れる抜け道を見つけました。猫にも列車にも料理にも、数字 0 と書きます。各組はぴったり一致し、誤差はゼロです。しかし、札から動画を見分けられません。

これは学習プログラムの故障ではありません。出した問題が、その答えを許しています。「同じ動画窓を近づける」と決めたら、続けて「全動画窓が一点へ集まるのをどう止めるか」を考える必要があります。

二種類の潰れ方

**不変性(invariance)**とは、関係のない変化に表現が振り回されないことです。LeVJEPA は大域埋め込み z_0 と各局所埋め込み z_v の二乗距離を測ります。切り抜きと色が違っても、同じ16フレームなら近づけます。距離の両側へ勾配が流れるため、先生と生徒ではなく、同じパラメータを使う二人が一緒に動きます。

この距離だけを最小にすれば、定数関数 z(x) = c が完全な解になります。どの組も差がゼロです。これが**完全崩壊(complete collapse)です。もう一つ、ベクトルは長いのに実際は数方向しか変わらず、残りの座標が定数または重複する次元崩壊(dimensional collapse)**もあります。見かけの次元ほど情報を持ちません。

負例サンプル、分散・共分散の制約、EMA 教師・予測器・勾配停止など、抜け道を塞ぐ方法はいくつもあります。LeVJEPA は SIGReg を選びます。サンプル集合の埋め込みが作る点群を、平均ゼロで全方向の分散がそろい、偏った相関のない標準等方正規分布へ近づけます。一点や平たい線では合格できません。

役割は明確です。不変性は一つの動画の視点同士の関係を決めます。SIGReg は多くのサンプルが作る集団全体の形を見ます。不変性だけなら全部同じになり得ます。SIGReg だけなら点群はきれいでも、同じ動画が近いとは限りません。そこで、固定係数で二つを足します。

なお、「崩壊していない」と「世界を理解した」は違います。背景、カメラ、圧縮の癖のような近道を記録していても、点群は広がります。データ監査と下流評価が必要です。

四つの点を描く

(0,0)、(0,0)、(0,0)、(0,0) は、どの組の距離もゼロですが、縦横に幅がありません。次に (−1,0)、(1,0)、(0,−1)、(0,1) を描きます。点は広がりました。それでも、その座標が何を意味するかまでは図形だけから言えません。

証拠

持ち帰る三文

  1. 不変性損失だけなら、全入力を同じ定数へ写しても損失ゼロになります。
  2. SIGReg はバッチの埋め込み分布を制約し、完全崩壊と次元崩壊を押し返します。
  3. 非崩壊は退化していない証拠であって、世界理解の証明ではありません。

口頭チェック

  1. なぜ定数エンコーダーは不変性損失をだませますか。
  2. 大域枝は勾配停止されていますか。
  3. 点群が広がれば、動作の意味を学んだと言えますか。
答え
  1. どの組も同じ定数になり、差がゼロになるからです。
  2. いいえ。両端に勾配が流れます。
  3. 言えません。動作情報を対象にした評価が別に必要です。